
Grokは、イーロン・マスク率いるxAI社が開発した対話型生成AIです。2023年11月に発表され、その後急速に進化を遂げてきました。2024年8月にはGrok-2、2025年2月にはDeepSearch機能を持つGrok 3が登場しました。Grokは単なるチャットボットではなく、リアルタイム情報へのアクセスやユーモアを交えた回答など、独自の特徴を持つAIモデルとして注目を集めています。
Grokの基本概要と特徴
Grokは、X(旧Twitter)のプラットフォームと統合されたLLM(大規模言語モデル)ベースの対話型生成AIです。他の生成AIと比較して、いくつかの独自の特徴を持っています。
リアルタイム情報へのアクセス
Grokの最大の特徴は、Xのデータにリアルタイムでアクセスできることです。これにより、最新の情報に基づいた精度の高い回答を提供できます。世界中で起きている最新の出来事について質問すると、Xを通じて収集したリアルタイム情報を基に回答を生成します。
モード切り替えによる柔軟な対応
Grokには「レギュラーモード」と「ファンモード」(ユーモアモード)という2つの対話モードがあります。レギュラーモードでは一般的な回答が得られ、ファンモードではユーモアを交えた友人との会話のような回答が得られます。これにより、状況や目的に応じて最適な対話スタイルを選択できます。
「スパイシーなトーン」による個性
Grokのもう一つの特徴的な点は、他のAIと比べてより個性的な応答スタイルです。ウィットや皮肉、時には反抗的な表現を含む独特な「スパイシーなトーン」を持っています。これは「中立的で無難なAIではなく、真実を追求し、時には挑戦的な意見も述べるAI」を目指す設計思想の表れです。
例えば、ポップカルチャーやSFネタを盛り込んだ例え話や、カジュアルで親しみやすい口調、時事ネタや最新トレンドを盛り込んだ会話など、より「人間らしい」対話体験を実現しようとしています。
他のAIとは一線を画すアプローチ
Grokは他の生成AIが回答を拒否するような質問(道徳や社会に反する可能性のあるもの)にも対応することがあります。公式サイトでも「not-so-serious discussions(それほど真剣ではない議論)」に対応していると説明されています。
マルチモーダル機能と画像生成
Grok-1.5Vからはマルチモーダル機能が追加され、画像や図表などの視覚情報も処理できるようになりました。さらにGrok-2では「FLUX.1」という高精度な画像生成AI機能が搭載され、テキストプロンプトを入力するだけで画像を自動生成できます。
進化するモデル構成
Grokは継続的にアップデートされており、様々なモデルが開発されています:
- Grok-1:初期モデル
- Grok-1.5:最大12万8000トークンのコンテキストウィンドウを持つ
- Grok-1.5V:マルチモーダル機能が追加
- Grok-2:GPT-4 Turboを上回るとされる性能
- Grok-2 mini:速度を重視したSLM(小規模言語モデル)
- Grok 3:DeepSearch機能とThink機能を提供する最新モデル
Grokの基本的な使い方

Grokを利用するには、X(旧Twitter)のアカウントが必要です。基本的な操作方法は以下の通りです。
アクセス方法
- Xにログインする
- 画面左にあるメニュー欄から「Grok」を選択する
- 検索欄にプロンプト(指示や質問)を入力する
料金プランと利用条件
2024年12月からは無料ユーザーでもGrokが利用できるようになりましたが、利用回数などに制限があります。より高度な機能をフルに活用するには、Xの有料プランに加入する必要があります:
- ベーシック:326円/月、または3,916円/年
- プレミアム:857円/月または10,280円/年
- プレミアム+:2,275円/月または27,300円/年(2025年1月時点)
無料で使う場合は、2時間で生成できる回答数の上限が10となるなどの制限があります。
Grok 3のDeepSearch機能について
Grok 3には、「DeepSearch」と呼ばれる新しい検索エージェント機能が搭載されています。これは単なる情報検索にとどまらず、インターネットやXプラットフォーム上の情報を能動的に探索・分析し、複数の情報源からの情報を統合・要約する機能です。矛盾する情報についても推論し、最終的な回答には情報源を引用します。
DeepSearchの主な特徴
DeepSearchは従来の検索よりも深く、精度の高い情報収集と要約を実現するツールです。その主な特徴は以下の通りです:
- リアルタイムデータ活用: X(旧Twitter)の投稿やWebサイトからリアルタイムで情報を収集し、最新のトピックや動向も反映した回答を生成します。
- 多角的かつ大量の情報参照: 質問に応じて20〜150件超のWebページやニュース、学術論文などを参照し、幅広い視点から調査・分析します。
- 矛盾点の推論と整理: 集めた情報に矛盾があった場合もAIが推論し、もっとも妥当な結論を導き出して簡潔にまとめます。
- 引用付きの要約レポート: 回答には参照元の引用が明記され、信頼性と透明性が高いのが特徴です。主要な引用元が一覧でまとめられるため、根拠を確認しやすくなっています。
- スピーディなレポート生成: 通常30秒~1分半程度で、論理的かつ構造化されたレポートが作成されます。
- Xのリアルタイム投稿も参照: 他のAI検索では取得できないXの最新投稿も情報源として活用できるのが大きな強みです。
DeepSearchの使い方
- XのアプリやGrokのWebサイト、アプリからGrok 3にアクセス
- 検索ボックスで「DeepSearch」モードをオン(ボタンが青くなればOK)
- 質問や調査したい内容を入力
- 1分ほど待つと、引用付きの詳細レポートが表示されます
DeepSearchが役立つシーン
- 最新ニュースやトレンドの調査
- ビジネスや研究のための多角的な情報収集
- 専門的なテーマや複雑な課題の背景調査
- 速報性が求められる分野での情報把握
DeepSearch利用時の注意点
- 日本語で質問しても英語サイトが優先されやすいため、日本独自の話題では情報が不足することがあります。
- まれに誤った情報を含む場合があるため、重要な調査では必ず引用元を確認しましょう。
GrokとChatGPTの主な違い
Grokと他の主要なAI、特にChatGPTとの主な違いを理解しておくと、用途に応じて適切なAIを選択できます。
開発元と基本コンセプト
- Grok: xAI(イーロン・マスク)が開発、ユーモア・皮肉・率直な回答とX(旧Twitter)との連携が特徴
- ChatGPT: OpenAIが開発、構造的で丁寧な説明、幅広いクリエイティブ生成に強み
リアルタイム情報へのアクセス
- Grok: Xの投稿などリアルタイム情報に直接アクセス可能
- ChatGPT: 標準では2023年までの学習データが中心(Webブラウズも可能)
応答スタイル
- Grok: スパイシーでフィルターが少なく、時に過激な表現も
- ChatGPT: 丁寧かつ中立的、説明が詳細で安全性重視
得意分野
- Grok: STEM分野(理数系)、技術的推論、時事情報
- ChatGPT: 文章生成、創造的なタスク、詳細な手順説明
利用環境
- Grok: X(旧Twitter)内、限定的な外部展開
- ChatGPT: Web、アプリ、APIなど多様な環境で利用可能
Grokの便利な活用方法
Grokには様々な活用方法があり、その特徴を活かした使い方が可能です。
リアルタイム情報の収集とニュース要約
Grokの最大の強みである、Xのリアルタイムデータへのアクセスを活用して、最新のニュースやトレンド情報を素早く収集できます。「今日の主要ニュースを教えて」や「〇〇に関する最新情報を教えて」のように質問することで、関連情報をまとめて提供してくれます。
文章作成と校正
Grokに依頼して、様々な種類の文章を作成してもらうことができます:
- メールの文章
- プレゼンの提案文
- SNSで発信する文章の下書き などの用途で活用できます。
プログラミングコードの生成と編集
プログラミングコードの作成や編集が可能で、VS Codeなどのエディタで開くこともできます。特に複雑なコーディングや数学問題は、Grok 3の「Think」(推論)モードを使うと効果的に処理できます。
マルチタスク処理と会話の分岐
Grokは複数のタスクを同時に処理でき、会話をツリー形式で分岐させることも可能です。これにより、複数のトピックについて効率的に情報収集・分析ができ、業務効率の向上に貢献します。同じ画面上で複数の仕事を同時進行させることができるため、生産性が向上します。
画像生成機能の活用
テキストプロンプトを入力するだけで、AIによる画像生成が可能です。具体的な手順は、Xの画面左にあるメニュー欄からGrokへアクセスし、検索欄へ「〇〇の画像を作成して」と指示するだけです。高精度な実写画像を簡単に作成できます。
Deep Search機能による詳細な情報収集
Grok 3の「Deep Search」機能は、通常のブラウジングよりも多数のソースを検索し、ユーザーの意図を正しく汲み取って情報をまとめる能力があります。この機能は、詳細なレポート作成や広範なリサーチに役立ちます。ChatGPTやGeminiなどではアクセスが難しいXの情報も含めた検索が可能です。
「Think」モードによる思考プロセスの可視化
Grok 3には「Think」モードという特徴があります。このモードを有効にすると、Grok 3は最終的な回答だけでなく、その回答に至るまでの思考プロセス(推論過程)を段階的に表示します。これにより、ユーザーはAIの「考え方」を理解し、回答の信頼性を評価しやすくなります。
応答の編集と保存
Grokの応答内容をマークダウンエディタで開いて編集・保存し、そのまま会話を続けることができます。これにより、ユーザーが会話の流れをコントロールしやすくなります。
Grok利用時の注意点
いくつかの点に注意してGrokを使うことで、より効果的に活用できます。
情報の正確性
Grokはまだ発展途上のAIであり、誤った情報を提供する可能性があります。特に最新ニュースや未確認のデータについては、他の信頼できる情報源で確認することが推奨されています。
個人情報の取り扱い
対話内容が学習データとして活用される可能性があるため、個人情報や機密情報の入力は控えるべきです。情報セキュリティの観点から、慎重な対応が求められます。
質問の仕方
Grokに質問する際は、明確で具体的な質問を心がけることが重要です。曖昧な質問や抽象的な表現は、Grokが適切に理解できない可能性があります。より良い回答を得るためには、質問の内容を明確にし、必要に応じて背景情報や具体例を提供するとよいでしょう。
まとめ
Grokは、X(旧Twitter)のプラットフォームと統合された独自の特徴を持つ生成AIであり、リアルタイム情報へのアクセス、マルチタスク処理、画像生成、ユーモアを交えた対話など、他のAIとは異なる魅力を持っています。基本的な情報収集や文章作成だけでなく、コード生成や画像作成、最新の「Think」モードや「Deep Search」機能を活用することで、より高度なタスクにも対応できます。
Grokは継続的に進化しており、イーロン・マスクの「人類の知識と理解の探求を支援するツール」という位置づけのもと、将来的には人工汎用知能(AGI)の実現を目指す野心的なプロジェクトとして、今後も発展が期待されています。
どのAIを選ぶかは、あなたの目的やニーズによって異なります。リアルタイム性や率直な回答、Xのトレンド情報を活用したい場合はGrokが適しています。一方、幅広い文章生成や丁寧な説明、クリエイティブなタスクを重視するならChatGPTなどの他のAIの方が向いているかもしれません。用途に応じて使い分けることで、AIを最大限に活用できるでしょう。